Blue Birthday
A.D.20XX. 科学の発達は機械に“心”を与え、自らの意志で考え動く人型ロボットを生み出した。 ロボット達は文明社会のあらゆる分野で活躍し、更なる文明社会の発展を促すに至った。 そして人々はロボットを人間の良き友人として迎え入れ、共に平和に暮らしていた・・・。 だが人間とロボットが共存する平和な世界に、突如として異変が起こった。 (破壊せよ!!) ズガンッ!!ドガァァァーーーーーン!! 暴走した6体の工業用ロボットが、人々を襲い、街を破壊し始めたのだ。 生まれ持った力を存分に発揮し、何かに取り憑かれたかの様に破壊の限りを尽くすロボット達。 その強大で狂暴な力の前には、警察も軍隊も全く歯が立たなかった。 街中の至る所で大爆発が起こり、真っ赤な炎が激しく燃え上がり、黒煙が空を暗闇に変えた。 そして文明と繁栄の象徴だった高層ビル群は脆くも崩れ去り、人々は恐怖に逃げ惑った。 平和に賑わっていた大都市の日常は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまったのだ。 (やめろおっ!!やめてくれえ!!みんな・・・どうしてこんな酷い事をするんだ!!) 目の前で起こっている現実が信じられない少年は、たった一人でロボット達に向かっていく。 同じ親の下に生を受けたロボットとして、破壊者に変貌してしまった兄弟達を止める為に。 (み、みんな・・・一体どうしちゃったんだよ・・・僕の事が分からないの?) 必死で呼び止めようとする少年を無視し、ロボット達は黙々と破壊活動に専念する。 分かるはずなのに分からない、まるで記憶から少年の事を消去してしまったかの様な兄弟達。 (登録名はロック・・・ライトナンバーズに所属する家庭用ロボット・・・か。クックックッ・・・ライトの奴め。困った挙げ句の果てに、こんな役立たずを送り込んでくるとはのう・・・) (誰だ!?) ロボット達に代わって答えた声に驚き、聞こえた上空を見上げる少年。 (・・・ワシはもう間も無く、この世界の支配者に君臨する者・・・!!) 暗闇に染められた上空には、恐ろしく巨大な悪魔の影が浮かび上がった。 (・・・折角お使いに来たというのに・・・とんだ無駄足じゃったなあ、小僧・・・こ奴らはもはやライトナンバーズでもなければ、お前の兄弟などでもない・・・偉大なるこのワシの命令するがままに動く、忠実なロボットなのじゃ・・・) (そ、そんな・・・嘘だっ!!そんな事信じられるもんかっ!!) 狂気に汚れた悪魔の目と、少年の清らかな青い瞳が睨み合う。 (みんなは僕が連れて帰る!!お前の思い通りにはさせないぞ!!) (ほう・・・このワシに歯向かおうと言うのか・・・?) 悪魔と対峙する少年の周りを、いつの間にか破壊活動を中断したロボット達が取り囲んでいた。 ロボット達はそれぞれが持つ武器を構え、感情も意志も感じられない目で少年を睨んでいる。 (・・・みんな、お願いだよ。一緒に帰ろう・・・ライト博士もロールちゃんも心配してるよ・・・) (無駄と言っておろうに・・・物分かりの悪い小僧じゃて・・・) ロボット達を説得しようと必死に話し掛ける少年に、悪魔は呆れて溜息をつく。 (そんなに信じたくないのなら・・・己の身を以て確かめるが良い!!) バチバチバチバチバチィッ!! ロボットの1体が掌から放った高圧電流が、餓えた猛獣の如く獲物に牙を剥いた。 (うわああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!) 獲物にされてしまった少年は、全身を凄まじい電光に包まれ、悲痛な叫び声を上げる。 そして電光が収まると、少年はその場に崩れる様に倒れた。 (う・・・あ・・・ああ・・・) ボロボロに破けた衣服、剥き出しになって火花を散らす回路、醜く焼け焦げた全身・・・。 その苦痛に悶えて呻き声を上げる少年を、兄弟達は冷たく見下ろしている。 (マスターノメイレイニヨリ、テキヲコウゲキ) (ダメージ96パーセント・・・テキ、タイハ) 目と同様に一切の感情や意志を感じさせない、機械的な口調で言い放たれる言葉。 (マスターノショウガイトナルテキハ・・・) (スベテ・・・ハカイスル!!) 先程の少年に与えた一撃は、まさしくその言葉を実行に移した形だった。 (み・・・みんな・・・) 少年は信じたくなかった・・・彼らが心を失い、変わってしまった姿を。 文明社会に貢献する為、人々の生活を助ける為に働く事を誇りにしていた兄弟達が、文明社会を破壊し、人々を恐怖に陥れる狂暴な破壊者と化してしまった現実を。 そして街を破壊して廃墟に変え、更に止めに来た自分までも破壊しようとした悪夢を・・・。 (フハハハハハハハハハッ!!どうじゃ、小僧!これで信じる気になったじゃろう!!) 少年に現実を証明してみせた悪魔は、得意げに笑い声を響かせる。 (・・・何の能力も持たない家庭用ロボットの分際で、このワシに歯向かった報いじゃ・・・お前はそこで苦しみ悶えながら死んでゆくが良い・・・己の無力を嫌と言う程噛み締めてな・・・!!) (あう・・・ああっ・・・うああ・・・) 悪魔の死の宣告通り、少年の命を奪い取ろうと、凄まじい苦痛が心と体を蝕んでいく。 命のエネルギーが急速に失われ、体の機能が低下して動かなくなってくる。 そして悪魔に従う忠実なロボット達は、そんな少年に背を向けて去っていく。 (ダ・・・ダメだ・・・みんな・・・行っちゃダメだ・・・) それでも兄弟達を止めようと力を振り絞り、必死に右手を伸ばす少年。 しかし兄弟達は少年に振り返る事無く、次第に遠く見えなくなっていった。 (み、みんな・・・待っ・・・て・・・) 少年が右手を地面に落とすと、悪魔は愉快そうに笑い声を響かせた。 (ワハハハハハッ!!惨めじゃなあ、小僧!!・・・今度生まれてくる時はライトに頼んで、ワシがぶったまげるくらいに強くしてもらえ・・・そうじゃ、戦闘用ロボットにでもしてもらうんじゃな!!ウワ〜ッハッハッハッハッハッハッハッハ〜〜〜〜〜〜!!!) 悪魔もロボット達の後を追う様に消え去り、少年は廃墟に一人残された。 (う・・・ううっ・・・) 少年は右拳を握り締め、震えながら涙を流した。 情けなかった、悔しかった・・・力無き家庭用ロボットである自分自身が。 (・・・力が欲しい・・・僕に力さえあれば・・・) それから間も無くして、各地でロボットの暴走が始まった。 ゴオオオオオオオオオオオオオオオ・・・!! 真っ赤な炎に包まれて崩壊していく大都市の中を、我が物顔で侵攻していくロボット大軍団。 (コワセ!!コワセ!!) (ハカイセヨ!!ハカイセヨ!!) 悪魔は6体の工業用ロボットと同様に、文明社会の至る所で働く量産型の作業用ロボットにも悪の洗脳を施し、狂暴な破壊兵器に改造してしまったのである。 (いけっ!!やれっ!!ロボット達よ!!ワシの野望を叶える為!!ワシの世界征服の野望の為に・・・全てを破壊するのじゃあ!!) 己が操るロボット大軍団が猛進し、己が忌み嫌う世界を破壊していく光景に見入る悪魔。 (ハハハハハッ!!泣け!叫べ!苦しめ!平和ボケした愚かな人間どもよ!!貴様等はワシの天才を認めようとはしなかった・・・その事を末々まで後悔するが良い!!) そして己が忌み嫌う人々が恐怖し、絶望する様に狂喜する。 (だからロボットなんか信用ならなかったんだ!!いつかこうなるんじゃないかと思った!!) (ロボットがいなければ、こんな事にはならなかったのよ!!) 人々にとってロボットは生活に不可欠な存在であり、親しみの深い良き友人でもあった。 そのロボット達が生活を脅かす狂暴な破壊兵器と化してしまった時、人々のロボットに対する信頼は脆くも崩れ去り、憎悪の対象になってしまったのである。 (ロック・・・!!ロック、しっかりして!!) 見るも痛々しい姿で発見された少年の傍らで、少女が泣きながら呼び掛ける。 (頑張れ・・・生きるんじゃ、ロック!!) 少女と共に現場に駆け付けた老科学者も、瀕死の少年に懸命の応急処置を施している。 ト・・・クン・・・ト・・・クン・・・ ロボットの心臓部である動力炉が、辛うじて弱々しく鼓動を続けている。 少年の心が生きる希望を失い、死の絶望に負けてしまった時、命の鼓動は止まってしまうのだ。 (今度生まれて来る時は、戦闘用ロボットにでもしてもらうんじゃな!!) 少年はもう目が見えなくなっていたし、全身の感覚も失われつつあった。 あれほど全身を激しく蝕んでいた苦痛も殆ど感じなくなり、代わりに重い眠気に襲われていた。 ただ悪魔に言われたその言葉だけが心の中に何度も響き、何とか意識を保っていた。 (・・・ライト博士・・・お願いがあります・・・) 反対される事は分かっていたし、本当に正しい事なのかも分からなかった。 それでも僅かに感じた希望に賭けて、少年は老科学者に願い出た。 (僕を・・・僕を戦闘用ロボットに・・・改造して下さい・・・!!) その願いを聞いた瞬間、老科学者も少女も驚きのあまり声を失った。 (馬鹿な事を言うんじゃない!!お前は自分が何を言っているのか分かっているのか!!) 老科学者は思わずカッとなって、少年を怒鳴り付けた。 平和利用の為のロボット開発と研究を続けてきた彼にとって、戦う事だけを目的に造られる戦闘用ロボットは、彼の主義に最も反するロボットなのだ。 その主義に反する願いを口にしたのだから、少年を怒らずにはいられなかった。 (また自分から危険に飛び込むつもりか!?お前は家庭用ロボットなんじゃぞ!!) そして戦闘用に改造して欲しいと言う事は、少年は兄弟達と戦うつもりなのだ。 つまり自分が造り出したロボット同士が傷付け合い、壊し合う事になる。 そうなれば勝敗に限らず、少年を含めた兄弟の誰かが必ず壊れてしまうのだ。 ロボットを心から愛し、自分が造り出したロボット達を本当の子供の様に可愛がっている老科学者にすれば、ロボット同士、ましてや愛する我が子同士の死闘など絶対に許したくなかった。 (・・・分かっています。僕は家庭用ロボットだから・・・力が無いから・・・何も守れなかった・・・) 視覚を失った少年の目の前に、昨日までは在った光景が広がる。 一緒に笑って、泣いて、ケンカして・・・本当に仲が良くて、強い絆で結ばれた兄弟達。 ロボットである自分達に特に偏見を持たず、良き友人として親しく接してくれた人々。 大好きな人達との大切な思い出が、幸せな日々が、走馬灯の様に心の中を駆け巡る。 そして自分が力無き家庭用ロボットだった為に、それらを守る事ができなかった無念も・・・。 (・・・でも・・・でも僕は・・・みんなを助けたい・・・人間もロボットも・・・みんなが仲良く暮らせる平和を・・・未来を・・・取り戻したいんです・・・) (ロック・・・) 同じ家庭用ロボットの妹として、少女は兄である少年の気持ちを理解していた。 兄が決して争い事を好まず、誰にでも思いやりを持てる優しい性格だという事は知っている。 しかしその優しさ故に自らを犠牲にし、人々の為、兄弟達を止める為に戦う決意をしたのだ。 そして己の無力を思い知ったからこそ、戦う為に必要な力を欲している事も分かった。 (お願いです、博士・・・僕に力を・・・戦う力を・・・下さい・・・) 少年は最後の力を振り絞って、震える右手を精一杯に挙げた。 親に救いを求める我が子の手・・・握ってやりたいと思いつつも、老科学者は握れなかった。 だが苦悩し迷っている所で、力尽きて落ちかけた少年の手を、老科学者とは別の手が掴んだ。 (ロール!?) 老科学者が驚いて見ると、少女が両手で少年の手を握り締め、落ちない様に支えていた。 そして少女は大粒の涙を流して、震えながら老科学者に訴えた。 (あたし・・・ロックに戦ってなんか欲しくない・・・でも未来の為に戦う力が、今のロックの生きる希望になるのなら・・・博士、お願いします!!ロックに戦う力を与えてあげて下さい!!) (ロール・・・ちゃん・・・) 少女の両目から流れ出る大粒の涙が、少年の頬に落ちて流れていく。 そして少年は感覚が殆ど無くても、妹の両手から優しい温かみが伝わってくるのを感じていた。 (お前達・・・) そんな兄妹を見た老科学者は、親として今やるべき事を決意した。 我が子に生きる希望を与える為に、子供達を悪魔の手から救い出す為に。 そして我が子達が人々と共に歩んでいける、人間とロボットの平和な未来を取り戻す為に。 (・・・分かった・・・ロール、手伝っておくれ) (は・・・はいっ!) 兄妹の合わさった手を大きな両手で握り、親としての決意を示す老科学者。 そして親の手の温かみも感じ取った少年は、微笑みを浮かべて目を閉じた。 (ライト博士・・・ロールちゃん・・・ありが・・・とう・・・) トクン・・・トクン・・・ 一命を取り留めた少年は、すぐに老科学者の研究所に運び込まれた。 老科学者は少女を助手にして、手術台で眠っている少年に改造を施す。 (・・・ロック、お前に力を与えよう・・・そして生まれ変わるのじゃ・・・) ドクン・・・!ドクン・・・! 弱々しく停止寸前だった動力炉が、命の鼓動を次第に強めていく。 まるで新たな体に転生して死の淵から甦るという、伝説の不死鳥の様に・・・。 (家庭用ロボットから戦闘用ロボットに・・・!!) ドックン!!ドックン!!・・・ ・・・ロボット達の暴走が始まってから、早くも遅くも三日が経過した。 文明も繁栄も見る影も無く破壊し尽くされ、人気の全く無いゴーストタウンと化した大都市。 当初の様な破壊活動も今は行われておらず、街は不気味な程に静まり返っていた。 しかし街から追い出された住民の人々は、避難したままで決して街には戻ろうとはしなかった。 正確には戻りたくても戻れない、街に入りたくても入れないと言うべきか。 「ブルルルル・・・」 「ギ・・・ギ・・・」 街は恐怖のロボット大軍団が占拠し、人一人として入る事を許さなかったからだ。 ブンビーヘリやマンブーといった偵察用ロボットが、群を成して街中を巡回している。 崩壊した高層ビルの外壁にはブラスター、亀裂と穴だらけの道路にはスージーとカマドーマー、更にはスクリュードライバーやビッグアイまで配置されている。 これらのロボット達は侵入者を発見次第、すぐに攻撃して排除する様に設定されているのだ。 「クックックッ・・・いいぞいいぞぉ〜。この調子で世界はワシのものになるのじゃ・・・!」 ビッグアイのモノアイを通じ、遠く離れた暗闇の大型モニターにその光景が映し出される。 その光景に目を輝かせて見入り、嬉しそうにニヤニヤと笑みを浮かべる一人の男。 今回の事件の黒幕であり、ロボット大軍団を操って世界征服を企んでいる悪魔その人である。 「ここにはカットマンをエリアボスに派遣しよう・・・どれ、他の連中はどうなっておるかな?」 悪魔がモニターを操作すると、画面が6つに分割し、他の5つの地域の様子も映し出された。 『ガッツマンはピッケルマン部隊を率いて、ツインピラミッドの建造を順調に進めています』 『アイスマンがリゾートアイランドの凍結を完了しました』 『ボンバーマンはスナイパージョー部隊と共に、空中都市を攻撃中です』 『ファイヤーマンがロボット製造工場地帯を制圧。これよりキラーボムの量産に入ります』 『エレキマンが発電所の電力供給を停止。首都圏一帯は停電してパニックに陥っています』 次々と入ってくる各地の朗報に、悪魔は笑いが止まらない。 「ククク・・・もうすぐじゃ・・・楽しみじゃ・・・この世紀の大天才Dr.ワイリーが、全世界の支配者に君臨する日は近い!!・・・フフフフ・・・フハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハ!!!ハァ〜ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」 悪魔・・・Dr.ワイリーの狂気の笑い声が、暗闇の中に響き渡る。 世界はこのままロボット大軍団に蹂躙され、悪魔の手中に堕ちてしまうのだろうか・・・。 「ハッハッハッ・・・ん?」 Dr.ワイリーはふとモニターに目を向けると、ようやく笑うのを止めた。 モニターに映し出された6つの映像の中の1つに、何やら妙なものが映っているのが見えた。 「・・・何じゃ、アレは?」 モニターを再び操作し、それが映っている街の映像を拡大してみるDr.ワイリー。 それは立ち塞がったガードロボット達を前にして、廃墟の中を一人佇んでいた。 しかもそれは人間ではない、青色に輝くボディとヘルメットをした少年型のロボットだ。 あどけなくも強い意志を感じさせる顔は、清らかな青い瞳で凛々しく前を見据えている。 「シンニュウシャ・・・ロボット」 「データ、ケンサク・・・」 「ナマエ、フメイ・・・ケイシキ、フメイ・・・ショゾク、フメイ・・・」 ガードロボット達が不気味な機械的音声を発して、目の前に立つ青いロボットを分析する。 しかしいくらデータベースを隅々まで検索しても、青いロボットのデータが見つからない。 データベースには世界中のあらゆるロボットのデータが登録されており、アクセスすればすぐに調べたいロボットのデータを引き出す事ができるはずなのだ。 「データ・・・ナシ・・・」 そして最終的に出された検索結果は、青いロボットのデータは存在しないという事だった。 つまりデータベースに登録されていないという事は、その存在がまだ確認されていないロボットだという事になる。 「僕は・・・」 青いロボットはその検索結果に対して、静かに口を開き、そして力強く答えた。 「ライトナンバーズの戦闘用ロボット・・・ロックマンだ!!」 自ら名乗ったロックマンに反応して、ガードロボット達は即座に動き出した。 「ロックマン!!シンニュウシャ!!」 「シンニュウシャ!!ハカイスル!!」 「ハイジョスル!!」 3体のブンビーヘリが先陣を切って、空中からロックマンに襲い掛かった。 だが急降下で迫り来るブンビーヘリを、ロックマンは軽やかに高くジャンプして避ける。 ジャキッ!! 空中を反転するロックマンの右腕が、瞬時にバスターと呼ばれる銃型アームに変形した。 そしてバスターを左手で押さえ、真下を通過していったブンビーヘリに向かって構える。 「ロックバスター!!」 ドォン!!ドォン!!ドォン!! バスターの銃口が光り輝き、発射された三本の閃光が、3体のブンビーヘリを貫いた。 ブンビーヘリが爆発四散する中、ロックマンは鮮やかに空中回転して静かに地面に着地する。 そしてその爆発を合図にして、ガードロボット達が一斉にロックマンに襲い掛かった。 「なっ・・・何者じゃあ!?あんなロボット、見た事がないぞ!?」 ロックマンがガードロボット達と繰り広げる激戦を見て、Dr.ワイリーは驚愕の声を上げる。 体当たりを仕掛けてきたスージーにカウンターで鉄拳を叩き込み、一撃で粉砕するロックマン。 マンブーやスクリュードライバーが放つ散弾を俊敏に避け、速やかに反撃するロックマン。 頭上から狙撃してくるブラスター、飛び跳ねてくるカマドーマーを正確に撃ち落とすロックマン。 その小さなボディからは信じられない程の凄まじい戦闘力を発揮し、ロックマンは次々と迫り来るガードロボット達を撃破していく。 「ヤツは・・・確かにライトナンバーズと言った・・・そんなはずはない・・・あのライトが・・・良い子ぶってばかりで臆病者だったライトが、戦闘用ロボットなぞ造るはずが・・・」 かつてのライバルにして親友であり、今は怨敵である男の事を思い出すDr.ワイリー。 だがそこでとんでもない事実に気付き、脳天に落雷の直撃を受けた様な衝撃を覚えた。 「・・・ロックマン・・・ロック・・・じゃと!?」 世界征服の野望を実行に移した当初、無謀にも自分に歯向かってきた家庭用ロボットの少年。 死んだと思っていたその少年の顔と名前が、モニターのロックマンと完全に重なる。 「ま、まさか・・・お前は・・・あの時の・・・小僧・・・!?」 まるで幽霊でも見たかの様に顔面蒼白し、震える右手でロックマンを指差すDr.ワイリー。 そう・・・ロックマンはロックが改造を受け、甦った姿だった。 柔らかく脆い人工皮膚の肌は、超合金『ライト・セラミカルチタン』の強固な装甲に変わった。 力を求めた右腕は、強大な威力を持つ武器『ロックバスター』に変わった。 死の絶望に止まりかけた心臓は、生きる希望に力強く鼓動する『R.S.動力炉』に変わった。 パワーもスピードもテクニックも、全ての能力があの時とは比較にならない程に強く変わった。 己の無力に泣いた家庭用ロボットの少年『ロック』は、強力な戦闘用ロボットの戦士『ロックマン』に生まれ変わったのだ。 モニターのロックマンが右腕のバスターを構え、Dr.ワイリーに標準を定めた。 「・・・ヒッ!?」 カアァッ!! バスターの銃口が輝いた次の瞬間、モニターの画面全体が真っ白になり、強烈な光を発した。 「ぐわあっ!!」 暗闇を明るく照らした光は、怯んだ悪魔をそのまま後方に吹っ飛ばした。 「ギ・・・ギギ・・・」 戦場ではガードロボット最後の1体であるビッグアイが、モノアイを撃ち抜かれていた。 機能中枢であるモノアイを破壊されたビッグアイは、その巨体に見合う大爆発を起こす。 ドゴォォォォォン!! 街を占拠していたガードロボット達は、ロックマンの活躍によって全滅した。 そして見事に勝利したロックマンは、右腕のバスターを構えたまま力強く宣言する。 「みんなの未来は・・・僕が守る!!」 戦え、ロックマン!! 人間もロボットも、みんなが仲良く平和に暮らせる未来の為に・・・!! |