Get Back The Future
Vol.3
ギャリイイイイイイイッ!! 「さあ・・・掛かって来い!!バラバラに切り刻んでやるぜ!!」 高機動戦闘用ロボットのメタルマンが、特殊武器メタルブレードを両手に持ち、立ち向かってくる歩兵ロボット達を原形を留めない程に細かく切り刻む。 ビュオオオオオオオオッ!! 「どけいっ!!我が風に吹き飛ばされたくなかったらな!!」 空中戦闘用ロボットのエアーマンが、異形のボディの腹部と左腕に装備した扇風機を回し、特殊武器エアーシューターを発生させて戦車部隊を吹き飛ばす。 ジュワアアアアアアッ!! 「プププ・・・僕は地上戦は苦手なんだけどなあ・・・!!」 水中戦闘用ロボットのバブルマンが、頭頂部の発射口から特殊武器バブルリードを撃ち上げ、その強酸性の泡で武装ヘリや戦闘機を溶かして撃墜する。 ザシュシュシュシュシュッ!! 「・・・遅い!!止まって見えるぞ!!」 高速型戦闘用ロボットのクイックマンが、その光速をも超えるスピードで銃弾の雨を避け、特殊武器クイックブーメランを連射して警官ロボット隊を狩る。 ボボボボボボボボボボムッ!! 「我等は破壊する為に生まれた・・・!!破壊が我等の使命なのだ!!」 重火器内蔵型戦闘用ロボットのクラッシュマンが、その全身に仕込まれた特殊武器クラッシュボムを発射し、高層ビルやパトカー等、全てを粉砕する。 キィーーーーーーーーーーン!! 「ギャヒヒヒヒッ!!時間を制する者は・・・世界を制するのさ!!」 時間制御戦闘用ロボットのフラッシュマンが、特殊武器タイムストッパーで時間を止める超能力を使い、魔術師の如く敵を翻弄して撃ち倒す。 ゴオオオオオオオオオオッ!! 「燃えろ燃えろ〜っ!!みんな燃えちゃえ〜っ!!」 火炎放射戦闘用ロボットのヒートマンが、12000度の超高熱を発する特殊武器アトミックファイヤーを全身にまとい、あらゆる物を焼き尽くす。 バチバチバチバチバチバチィッ!! 「ガハハハハッ!!そんな攻撃・・・屁でもないわ!!」 密林戦闘用ロボットのウッドマンが、木の葉型のビットで身を守る特殊武器リーフシールドを展開し、砲撃から爆撃まで全ての攻撃を防ぎ切る。 「・・・マスターの障害となる敵は・・・」 「全て・・・破壊する!!」 カッ!!ドッゴオオオオオオオオオオン!!! 大都市の中心に大爆発が起こり、警察も軍隊も、ビル群も全てを崩壊させた。 「ダメだ・・・とても敵わん!」 「退却・・・退却!!」 「何て奴らだ・・・!以前に暴走した工業用ロボットより強い!!桁違いに・・・!!」 Dr.ワイリーが送り込んだ戦闘用ロボット軍団『ワイリーナンバーズ』の戦闘力は凄まじく、攻撃開始から三時間も経たずに大都市を壊滅状態に追い込んでしまった。 そして警察や軍隊も歯が立たずに全滅、撤退する中、朝を迎えると同時にテレビやラジオ、インターネットが電波ジャックされ、Dr.ワイリーは全世界に宣戦布告したのだった。 『・・・ワシはDr.ワイリー・・・これより全世界の支配者に君臨する者!!ここまで来れば、もう姿を隠す必要はあるまい・・・堂々と世界征服を実行させて貰うとしよう!!ワシが造ったワイリーナンバーズの実力は、もう嫌と言う程に思い知ったじゃろう!!諸君等が頼る警察も軍隊も、ワイリーナンバーズの前には無力!!抵抗するだけ無駄じゃ!!・・・これ以上に被害が拡大する前に、さっさと降伏した方が身の為じゃぞ!?・・・フフフフ・・・フハハハハ!!ハァ〜ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ〜〜〜〜〜ッ!!!』 ワイリーナンバーズが猛威を振るう様子は、留置場のライト博士もスプリンガーが映し出す映像で目の当たりにしていた。 「酷い・・・何と言う酷い事を・・・!!」 ロボットが街を破壊し、人々が阿鼻叫喚で逃げると言う悪夢の様な光景に絶句するライト博士。 『酷い・・・!?素晴らしいとは思わんか?我がワイリーナンバーズの攻撃力!!防御力!!機動力!!全ての能力において、貴様のライトナンバーズを遥かに上回っておる!!・・・是非とも対戦させたかったものじゃが、今となっては実現不可能な夢物語か・・・つまらんが、不戦勝はありがたく頂いておくぞ!!ハハハハハハハハハハッ!!』 自分が造ったロボット達の性能に満足し、得意げに高らかな笑い声を上げるDr.ワイリー。 「・・・やめろ・・・やめてくれ、ワイリー!!これ以上、ロボットを悪事に利用するのは・・・!」 『悪事とは失礼な!!・・・これは革命なのじゃぞ!!未来を正しき方向に導く為のな!!』 ライト博士が必死に説得しても、野望に狂ったDr.ワイリーは全く聞く耳を持たない。 『ククク・・・もうすぐ貴様のロボット共は死ぬ!!そしてワシの邪魔をする者は、全て地上から消え失せるのじゃ!!・・・貴様はそこで嘆き苦しみながら、世界がワシの手に堕ちるのを見届けるが良い・・・己の無力を嫌と言う程噛み締めてな!!ワハハハハ!!ハ〜ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ〜〜〜〜〜ッ!!!』 ビョ〜ンビョ〜ンビョ〜ン・・・ガシャッ! 勝利宣言の如きマスターの笑い声が止むと、スプリンガーは用済みとばかりに壊れてしまった。 そしてDr.ワイリーの映像は消え去り、部屋には再びライト博士一人だけになった。 「くっ・・・くそおっ!!」 ドガッ!! 悔しそうに歯を食い縛り、握り締めた両拳を床に叩きつけるライト博士。 この事態をどうにかしたいと考えるものの、今の自分にはどうする事も出来ないのだ。 改めて自分の無力さを思い知り、苛立ちを募らせる事しか出来なかった。 (こんな時に・・・あの子がいてくれたら・・・!!) 自分の可愛い子供であり、同時に世界の危機を救った英雄である少年の顔が思い浮かぶ。 (・・・わしは何を考えておるのじゃ!あの子を再び戦わせようなどと考えるとは・・・) 前回はあの子が志願した事とは言え、あの子に武器を与えて戦場に送り込んでしまった。 以来はその行為が父親として本当に正しかったのかと、毎日の様に自問自答していた。 だがこの様な危機的状況に陥った今、一瞬だけあの子に再び戦って欲しいと願ってしまった。 微かだが自分の中にあの子が戦う事を認め、それに頼りたい意志がある事に気付いたのだ。 (・・・それに・・・あの子はもう・・・) ライト博士は顔を上げると、哀しみに満ちた目で壁の時計を見た。 時計の時刻は午前11時を回り、ライトナンバーズの廃棄処分が実行される正午まであと僅かに迫っていた。 「わしにはどうする事も出来んのか!?ただ指をくわえて見ている事しか出来んのか!?・・・頼む・・・誰か・・・誰か助けてくれ!!」 刻一刻と無情にも時間が過ぎる中、神に祈る様に懇願するライト博士。 そしてその願いが通じたのか、時を同じくして意外な人物がこの留置場を訪れたのだった。 キキィッ・・・!! その人物は専用の高級車に乗り、何人もの護衛や秘書を引き連れて来訪した。 「・・・こちらにおられるのですね?」 「はっ・・・はいいっ!」 「ななな・・・何でこの方がこんな所に!?」 彼女の来訪に警官達は慌てふためき、緊張に震えて彼女をライト博士のいる部屋へ案内した。 そして彼女はドアを叩いて丁寧に部屋に入ると、やはりライト博士をも大変驚かせたのだった。 「トーマス=ライト博士・・・ですね?初めまして。貴方にお願いがあって参りました」 見た目は50歳代前半くらいの白人女性で、高級スーツを着こなす気品に溢れ、その社会的地位の割には物腰が柔らかいが、意志の強そうな目をしている。 「この国を・・・世界を守る為に・・・貴方の力を私にお貸し頂きたいのです」 普段はテレビ等のメディアでないとお目に掛かれない、世界最大級の大物が目の前に現れた。 「貴女は・・・大統領!!」 ライト博士を乗せた大統領専用車は、廃墟の中を走りロボット廃棄処理場へと向かった。 ワイリーナンバーズが次の大都市を標的にして移動した為、道中で彼らに襲われる事は無かったものの、廃墟と化した大都市の光景は見るも悲惨で、恐怖と絶望に満ち溢れていた。 そしてロボット廃棄処理場に着いたライト博士達は、急いで場内の奥へと進んだのだった。 「・・・正午の時刻を回った・・・もう処分されてなければ良いのですが・・・」 「大丈夫です。私が指示して、この場内の廃棄処理作業を全てストップさせましたから・・・」 数人の護衛と秘書を引き連れた大統領は、歩を進めながらライト博士の心配に応えた。 「・・・しかし先程、車の中でお話頂いた事・・・貴女が信用出来ないわけではないのですが・・・本当に約束して下さるのですか?」 「全ては彼の“心”次第です・・・貴方は彼の意志を尊重したいと仰いました。彼が私の提示した条件を受け入れ、それらを全てクリアした時には・・・私も大統領の立場に賭けて、連邦議会と国民を説得します。必ず約束をお守りしましょう」 「・・・分かりました」 ライト博士の質問に穏やかに答えた大統領は、周りを見渡して哀しそうに顔を曇らせた。 場内には沢山のロボットが廃棄処分されてスクラップになり、その一部が散乱したり、スクラップの山が幾つも築かれたりしている。 「・・・まるでロボットの墓場ですね。私は初めて見ましたが・・・これ程に悲惨な場所だとは思いもしませんでした。ましてや貴方はロボットを我が子の様に愛しておられるとお聞きしています。見るに耐えかねない光景でしょう・・・」 「はい・・・ロボットにも命があるのに、人間の勝手な都合でゴミの様に捨てられる事を思うと・・・胸が痛みます。それに・・・こんな所に私の子供達がいるのかと思うと、余計に辛くて・・・」 「そのお気持ち・・・私も子を持つ母親ですから、とてもよく分かりますよ。そして・・・貴方が本当は、彼に戦って欲しくないとお考えだと言う事もね・・・」 「ありがとうございます、大統領」 自分の気持ちに理解を示してくれる大統領に感謝し、気持ちが少し楽になったライト博士。 そして一同は場内の最深部まで進み、ライトナンバーズが封印されている部屋に辿り着いた。 「・・・しかし、現実は彼に戦って貰わねばならないのです。警察も軍も敵わぬ今、ワイリーナンバーズに対抗出来る力を持ち・・・Dr.ワイリーの野望を阻止出来る可能性を持っているのは、彼しか残っていないのですから・・・!!」 トクン・・・トクン・・・トクン・・・トクン・・・ 部屋の中には棺桶の様なカプセルが8つ置いてあり、中にはそれぞれ8人のライトナンバーズのロボット達が人形の様に眠り続けている。 そしてその中の1つ、黒髪の可愛らしい少年が眠るカプセルを一同が囲う。 「・・・彼にこの世界の希望を・・・未来を託しましょう・・・!!」 大統領の指示を受けた護衛の一人が、カプセルの傍にある機械を操作し始める。 「エネルギーチャージを開始します!」 護衛が機械のスイッチを入れると、少年のカプセルにエネルギーが注入されていく。 ドックン・・・!!ドックン・・・!! 「エネルギーチャージ完了!!起動します!!」 力強い動力炉の鼓動音が部屋中に響き、少年を入れたカプセルの蓋がゆっくりと開く。 「・・・ロック・・・すまない。もう一度だけ戦っておくれ・・・」 父親の眼差しで見詰めるライト博士が声を掛けると、少年はゆっくりと眠りから目覚めた。 「奪われた未来を・・・取り戻す為に・・・!!」 |